私は近ごろ、義母のことを懐かしく思い出している。
昨年12月に104歳で旅立った。
義母は私が相談すると
「明日は明日の風が吹く」
「あとは野となれ、山となれ」
とよく言っていた。
私は、一見、投げやりで無責任な言葉のようで、その言葉をあまり好ましく思っていなかった。
だが、70を過ぎ老境に入った時、104歳という歳月を一生懸命に生きてきた人の言葉として反芻してみると、何と含蓄に富んだことを言っていたのだろうと思うようになった。
健康な肉体と精神に恵まれて、穏やかに、たおやかに最終章まで生ききった義母の何ものにもとらわれず、達観した心が反映した言葉だったのだ。
夫が義母のことを「鉄を真綿に包んだような人」と言ったことがあった。
まさに強靱な精神力の持ち主だったと改めて思った。
私は、日常のささいなことに一喜一憂したり、将来のことを思って心が暗くなったりしている。
だが義母のように、ありのままの日常を大切に生きていけばいいのだと思う。
残りの時間を、この二つの言葉を胸に、過ごしていきたい。
(東京都練馬区 三上敏子 主婦 71歳)