妻が願った最後の「七日間」

3月9日の朝日新聞「声」の欄から
パート 宮本英司 (神奈川県 71歳)

1月中旬、妻の容子が他界しました。
入院ベッドの枕元のノートに「七日間」と題した詩を残して。
《神様お願い  この病室から抜け出して 七日間の元気な時間をください
一日目には台所に立って 料理をいっぱい作りたい  あなたが好きな餃子や
肉味噌  カレーもシチューも冷凍しておくわ》
妻は昨年11月、突然の入院となりました。すぐ帰るつもりで、身の回りのことを
何も片づけずに。
そのまま不帰の人となりました。
詩の中で妻は二日目、織りかけのマフラーなど趣味の手芸を存分に楽しむ。
三日目に身の回りを片付け、四日目には愛犬を連れて私とドライブに行く。
《箱根がいいかな  思い出の公園手つなぎ歩く》
五日目、ケーキとプレゼントを11個用意して子と孫の誕生会を開く。
六日目には友達と女子会でカラオケに行くのだ。
そして七日目。
《あなたと二人きり  静かに部屋で過ごしましょ  大塚博堂のCDかけて
ふたりの長いお話しましょう》
妻の願いは届きませんでした。
詩の最後の場面を除いて。
《私は あなたに手を執られながら 静かに静かに時のくるのを待つわ》
容子。2人の52年、ありがとう。